かつて私が「伝説の下ネタクラン」を求め旅立つにあたり、最初に訪れた旅人の酒場。
あれからもう一年が過ぎようとしていた。
ある種の懐かしさとほろ苦さの入り混じった感情が自らの胸に湧き上がるのを覚えつつ、私はかつて通い慣れた酒場への道を歩いていた。 この道の先に、あの酒場が…
…しかし、記憶の中では確かに酒場があったはずのその場所には、想像を絶する廃墟が荒涼として広がっていた。
1年前世界を覆うクラン大戦の嵐に呑み込まれ、先の大戦の三国同盟では盟友だった独逸(ドイツ)との死闘を繰り広げたそこは、今はもはや何も残らない、草木ひとつ生えぬ一面の焼け野原だったのだ…
そこはすべてのものが活動を停止し、“しん” と静まり返る死の世界。 何ものも照らすもののない、暗闇に包まれた黄泉(よみ)の国だ。
クラン対戦の履歴は連戦連敗で真っ赤な血の色に染まっている。 血塗られた闘いの歴史の、その最終ページは7ヶ月以上も前のものだ。 つまり今年に入ってからは一度もクラン対戦は行われていない事になる…
血塗られ真っ赤な対戦履歴 |
それだけではない。 わずか100しかないクランチャットの枠だ。 活発なクランなら一時間と経たずに消えてしまうはずの過去ログだが、しかしここでは、何ヶ月も前に(おそらくは私と同じ様に懐かしさから)この地を訪れていた旧メンバー達、le●pinさんや神さんの記念カキコが今もまだ消えずに残っている。
かつての酒場の常連メンバーで、今なおこの地に名を留めているのはわずかに2人。 しかし…
へんじがない…
ただのしかばねのようだ…。
ふたりも今はもはや全ての生命活動を停止し、鬼籍へと名を連ねているらしい。
R.I.P.
ここは死者の眠る場所。
かつて「旅人の酒場」として栄え、大戦の戦火の中で「旅人の修羅場」となり、そして今は「旅人の墓場」となった。
私は、今は誰も埋める者とてないその墓穴(はかあな) ― 援軍リクエストをすべて埋め、そして、墓標を前にしばし黙祷(もくとう)を捧げた…
……
…どこか遠くで(人妻さんが)私を呼んでいる声が聞こえる。 旅立ちの時だ。
今度こそ二度と戻ることはないであろう彼(か)の地に別れを告げ、私は呼び声のする方角へ足を踏み出した。
(墓場の逝ったろう編 完)
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